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輸入貿易と知的財産権 【前編】

成功したビジネスモデル、誰かの思いついた斬新なアイデア、売れている商品の名前やロゴ、人気のあるキャラクターのデザイン。

世の中には、お手本にしたり思わずマネしたくなる『自分ではない誰かが生み出したすてきなもの』がたくさんありますよね。
でもそれらを無条件に模倣することが、時に重大な問題につながる可能性があることはみなさまご存じでしょうか。

重大な問題なんてそんなおおげさな、なんて思わないでくださいね。
人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物などには、『財産的な価値を持つもの』、総称して『知的財産』と呼ばれるものがあります。
そしてその知的財産の利用には『権利』、通称『知的財産権』が発生し法律で保護されている場合があるんです。

他人の財産や権利を法に触れる範囲まで侵害することは、たとえ悪気がなくても許されませんよね。
そしてこの『知的財産権』にまつわるトラブル、実は輸入貿易の現場では珍しくないものだったりします。

ということで、よりよい輸入貿易ビジネスのためになる海上速達便コラム、
今回のテーマは『輸入貿易と知的財産権』です。

INDEX

知的財産権とは?

前述のとおり、財産的な価値を持つ『人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物』が『知的財産』であり、この知的財産に一定期間の独占権を与えるようにしたのが『知的財産権』という制度です。知的財産権は、様々な法律で保護されています。

主な知的財産権とその保護法は以下のとおりです。

■特許権 (特許法)

■実用新案権 (実用新案法)

■意匠権 (意匠法)

■商標権 (商標法)

■著作権 (著作権法)

■回路配置権 (半導体集積回路の回路配置法)

■育成者権 (種苗法)

■地理的表示 (地理的表示法など)

■商品表示・商品形態 (不正競争防止法)

■商号 (会社法・商法)

 

それぞれの知的財産権とその保護法の管轄は、文化庁(著作法)や特許庁(意匠法・商標法・特許法・実用新案法)など多岐にわたっています。

輸入貿易の場合、関税法第六十九条の十一によって“特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品”は輸入してはならない貨物と定められています。

 

輸入貿易に関わることの多い知的財産権TOP3

輸入貿易の現場で特に注視されている知的財産権は次の3つです。
それぞれの保護対象と、税関で輸入を差し止められたことのある侵害物品の具体例を併せてご紹介します。

意匠権

独創的で美感を有する物品の形状、模様、色彩等のデザインを保護している

保護期間:出願日から25年(2020年3月31日以前の出願は登録から20年)

例:有名メーカーのデザインそっくりのイヤホン、美顔ローラー、トナーカートリッジや文房具、調理器具や家電など

商標権

商品・サービスを区別するために使用するマーク(文字、図形など)を保護している

保護期間:登録から10年(10年毎に更新することができます。)

例:東京オリンピック・パラリンピックのロゴが付いたピンバッジやTシャツ、イギリスの某有名ブランド特有の格子縞模様など

著作権

文芸、学術、美術、音楽の範囲において、作者の思想や感情が創作的に表現された著作物を保護している。

保護期間:原則として、創作時から 著作者の死後70年(法人著作は公表後70年)

例:人気キャラクターのワッペン、ワンポイント入りグッズ、コスプレ衣装、いわゆる海賊版と呼ばれる違法コピーDVD、CD、書籍など

税関における知的財産侵害物品の差止状況

2004年の統計では、差し止めされた物品のうち約半数の仕出国(輸入元)は韓国でしたが、その後2009年以降は現在に至るまで、約8~9割が中国からの輸入の際に差し止められています。

2019年(令和元年)の輸入差止件数は 2万3,934件で、点数は101万8,880件、これは1日平均にして約66件、2,700点以上の物品が輸入差し止めされている計算です。

ではどのような知的財産侵害物品の輸入差止が多いのでしょうか。

やはり圧倒的に多いのは偽ブランド品などの商標権侵害物品で、2万3,182件、次いで多いのが偽のキャラクターグッズなど著作権侵害物品505件とのことです。

ちなみに、2019年の差し止め実績の多い品目と比率は以下のとおりで、ここ数年の比率は概ね似たような状況とのこと。

1位 財布やハンドバッグ          36.8%
2位 衣類                 22.7%
3位 靴類                 7.6%
4位 スマホケース(携帯電話の付属品)など 7.0%

これらの商品を輸入する際には特に気を付けたいですね。

また輸送形態別に見ると、件数では郵便物が全体の88.1%と大半を占めており、海上輸送などの一般貨物では11.9%なので、信頼できるフォワーダーを通して輸入を行うことで、法に触れる行為を未然に防ぐことができているという見方もできそうです。

輸入貿易で知的財産権が問題になるシーン

税関への輸入申告の際、インボイスやパッキングリストなどの船積み書類と共に提出された絵型やカタログにもチェックが入ります。
輸入通関のための必要書類や税関検査については下記の記事もご参照ください!

【初心者必見!】 通関書類、基本の4つ    
【初心者必見!】 税関検査のギモン徹底解説 

書類チェックの際、キャラクターものや有名ブランド・メーカー品にそっくりなものについて、それぞれ知的財産権の所有者と交わしたライセンス契約書や著作物使用料(ロイヤリティ=Royalty)の支払いなど、適正な権利使用または権利譲渡を証明できるものがあり、かつ厳重な確認をクリアできたものについては、輸入許可を得ることができます。

しかし、審査書類のなかにそのようなライセンスなどがない場合はどうなるのでしょう?
合法的な輸入品であると証明できるものがない状態で、税関検査によって『知的財産を侵害していると疑われる物品』が輸入貨物の中から発見された場合には、当該の物品が知的財産を侵害しているか否かを認定するための認定手続が開始されます。

認定手続きのプロセスを詳細に解説すると、少々内容が濃くなってしまいますので、ここでは割愛させていただきます。正確な情報については税関の公式ページをご参照ください。https://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/c_001.htm

日本においては、税関が発見した知的財産権侵害の疑いがある物品について、なんらかの犯罪が関与している可能性があるケースを除き、知的財産を侵害するか否かの判断から知的財産侵害物品の没収・廃棄まで全て税関において行われます。

税関の認定手続きの結果、権利者との合意がとれるなどして、権利侵害に該当しないと税関に判断された場合は輸入許可がおります。

ただし、知的財産権侵害に該当するものだと判定された場合には、すべて没収、廃棄の処分が行われます。

このような差止めでは多くは物品が没収・廃棄等されるだけですが、繰り返し行われているなど悪質と判断されたものは、場合によっては告発され、刑事罰が科されることもあります(関税法では「10年以下の懲役若しくは 1,000万円以下の罰金、又はこれを併科する」と定められています)

ちなみに知的財産を侵害する疑義のある貨物を税関が発見する手掛かりは
・差止申立てにより権利者から提供される情報(真正品と侵害品を見分けるポイント、予想される輸出入者など)
・税関職員自らの知識や経験等から得る情報
などがあるそうです。

また、輸入申告をフォワーダーに依頼する場合、税関への申告前に通関士が『これはアウトな可能性が高い』と気付いてライセンスの有無などを追加で確認する場合もあります。

今回のポイントまとめ

・輸入ビジネスで商材を選ぶときは、知的財産権の問題が関わりやすい物品に気を付ける
・その物品を輸入しても問題ないか心配な時は、事前にライセンスなど確認する
・具体例をもっと知りたいときは税関のこちらのページがとても参考になります!

上記のポイントを踏まえ、次週は実例を交えた対策について解説をいたします。
どうぞおたのしみに!

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